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物語を愛するすべてのひとたちへ-小説すばる

2018年6月号 小説すばる

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【短編】彩瀬まる「ひかり」

【新連載】天野純希「三木城合戦記 第一回 加代の戦場」

【著者インタビュー】
津川友介
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』

――本書の大きなポイントである、「科学的に証明された」とは、具体的にどのようなことなのでしょうか。
津川 「〇〇が健康に良い/悪い」といった情報が、今の日本に溢れています。しかしその情報は、信頼できるものからできないものまで様々です。意外に思われるかもしれませんが、医師や栄養士などの専門家が提唱していたとしても、科学的証拠(エビデンス)がなければ信頼できません。たとえばAという食品が健康にいいか悪いかは「ランダム化比較試験」で証明するのが一番です。
――どのようなものなのでしょうか。
津川 被験者をくじ引きのような方法を用いて2つのグループに分け、一方にはAという食品を摂取させ、もう一方には摂取させないで、健康への影響を比較します。2つのグループは、運動習慣や性別、年齢といった他の要因が全く同じになると考えられるため、純粋にAが健康にいいか悪いかを検証することが可能になります。また複数の研究結果を取りまとめることで、より信頼できる結果を得ることができる「メタアナリシス」という手法があります。複数の研究で証明されているので、何年か経ってこれに反する研究が一つや二つ出てきたとしても、簡単に結論がひっくり返る可能性は低いと考えられます。メタアナリシスには複数のランダム化比較試験をまとめたものと、複数の「観察研究」(食事のパターンの調査を行い、その人達を追跡して病気になっているかを調べる研究)を統合したものがありますが、中でも前者は「最強」のエビデンスと呼べるものです。
――本書ではその知見をもとに、5つの健康に良い食品と、3つの健康に悪い食品を紹介しています。
津川 日本の方にとって意外なのは、「白米を食べると病気のリスクが上がる」というところかもしれません。白米に代表される「精製された炭水化物」を食べると、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化による病気のリスクが上がることが分かっています。パスタ、うどん等の小麦粉も同じです。逆に玄米や全粒粉のパン、蕎麦など「精製されていない炭水化物」は病気のリスクを下げるので、健康のためには置き換えることをお薦めしています。
――他にも牛肉や豚肉、ソーセージやハムも病気のリスクを上げるのですね。
津川 はい、大腸がんや脳卒中、心筋梗塞のリスクが上がると報告されています。魚は逆に健康に良いことが明らかにされているので、肉を魚(もしくは健康への害が無いとされる鶏肉)に置き換えるのが健康のためには良いと思います。
――そうすると、健康に悪い食品は食べないほうが良いのでしょうか。
津川 いえ、私も牛肉や豚肉は食べます(笑)。あれもこれもダメというのは味気ないですよね。自分の中で、食べる幸せと健康への影響のバランスを考えながら、選択していくことが大事だと思います。でも情報を知らずに誤った食生活をして病気になってしまったら、人は後悔してしまうのではないでしょうか。糖尿病や脳梗塞になった時に食生活が原因かもしれないと分かったら悲しいと思います。私が医師として診察していた時も、食生活の指導にかなりの時間を使っていました。でもそれって病気になってから食生活を見直してもらうということですよね。それでは遅いと思いました。もっと多くの人に、健康なうちに正しい情報を知ってもらえれば、知識がないために病気になってしまう不幸な人を減らすことができると思って、この本を書きました。日本にはあまりにも間違った健康情報が溢れていますから。
――確かに科学的根拠のない「健康本」が書店にたくさん並んでいます。
津川 はい。科学的根拠に基づかないものか、あるいは、一つの研究をあたかもすごく重要なことのように誇張して書いている本が多いです。テレビもネットもそうですね。現場の医師は「テレビで観たんだけれど」とか、「息子と娘がこんな本を買ってきてこんな治療法があると言っているんだけれど」といった、医療情報についての患者の誤解を解くのに多大な労力を割いています。それも何とかしたいと思い、まずは多くの方が興味を持つ「健康に良い食事」についての本を執筆しました。
――「究極の食事」というタイトルは印象的で目を引きます。
津川 最初は『科学的根拠に基づく本当に健康になれる食事』にしたいと思ったのですが、そんなカタいタイトルでは手に取ってもらえないと諭されました(笑)。私は内容には責任は持てますが、本のタイトルを決めるプロではないので、プロである編集者に任せました。根拠のない「健康本」は〝売れてしまう〟から、出版社も次々と刊行するのだと思います。経済合理性として、それは仕方がないのかもしれません。ならば正しい内容の本が売れるように努力するしかありません。この本が、“正しい内容の本こそ売れる”という前例になればいいと思っています。ただ、この本で紹介した研究は、世界中の第一人者たちが共通のコンセンサスとして持っているものです。研究の見逃しがないか多くの専門家にもチェックして頂きました。その意味では「究極の食事」と自信をもって言えると思います。

 

つがわ・ゆうすけ ◆ カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教授。医師。東北大学医学部卒、ハーバード大学で修士号、博士号を取得。聖路加国際病院、世界銀行勤務を経て、2017年から現職。共著に『「原因と結果」の経済学』がある。著者ブログ

『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』
魚は体に良い、リコピンが体に良いという研究はない、100%でもフルーツジュースは体に悪い――世界中の研究者による膨大な論文をもとにした「本当に健康に良い/悪い食べ物」を紹介。新しい時代の食の常識をつくる一冊。
東洋経済新報社 本体1500円+税

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