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物語を愛するすべてのひとたちへ-小説すばる

教室に並んだ背表紙

著:相沢沙呼

発売日:2020.12.4
定価:1400円(本体)+税

一人一人と丁寧に向き合う、しおり先生の真っ直ぐな言葉たち

 昼休みになるとまず図書室に向かった。


 高校時代の私の話である。仲のいいクラスメイトはいた。みんな優しかったし、友達だと認識してくれていたはずだ。しかし、私はみんなとお弁当を食べる時間が苦手で、毎日のように図書室に通っていた。


 周りが優しくしてくれるのは、私が芸能活動をしているからではないか、と不安に思っていたから。人よりもお弁当を食べるスピードが早く、恥ずかしかったから。あげはじめたらキリがない理由は、今思うとどれも些細なものだった。しかし間違いなく言えるのは、本が好き、なんて純粋な思いだけではなかったということだ。


 私にとっての図書室は逃げ場だった。二階の渡り廊下の先。じとっとしたその部屋には色とりどりの物語が詰まっていた。本の中に、異世界があり、事件があり、本物の愛があった。自意識のかたまりだった高校生の私が、自分のことを忘れられる世界があった。


『教室に並んだ背表紙』を読んで、そんな過去にタイムスリップしたような気持ちになった。この小説の教室の端に、自分も存在しているようだった。読み終えた人は皆、学生時代の自分に想いを馳せ、共感した登場人物に自分を見出すだろう。それほどに、学生のリアルな輪郭を保った物語だった。


 しかし、ひとつだけ、私の学生時代にはなかった点がある。しおり先生の存在だ。


 子供のように無邪気で、物事を真っ直ぐに捉える鋭さ。大人として、様々な経験を積みつつ、本を読むなかで育んだ愛。それらを兼ね備えたしおり先生は、背表紙しか見えないぎゅうぎゅうの本棚から、一冊一冊を取り出して読むように、生徒一人一人と丁寧に向き合っている。


 だからこそ、そんなしおり先生の言葉には何度もはっとさせられた。


 高校生の私は、楽しいことも沢山あるというのに悩むなんて贅沢だと思っていた。しかし、おなかの底が重いような不安は拭えなかった。当時の私が、しおり先生と出会っていたら何かが変わったのではないだろうか。


 羨ましい気持ちの一方で、時を経て、今、しおり先生と出会い、救われたとも感じている。


「大丈夫。先生が助ける。先生が助けるよ」


 根拠がなくたっていい。そんな真っ直ぐな言葉たちが、私は欲しかったのだ。


 この物語を読んだ今日に、私は栞を挟もうと思う。これから先、何か迷った時には、栞を頼りに今日を開き、また救いの言葉を得るのだ。


 登場する中学生六人のように、私だって自分の人生のなかで主人公として生きなければならないのだから。


 

Writing

大友花恋(おおとも・かれん)
'99年群馬県生まれ。女優、モデル。

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