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物語を愛するすべてのひとたちへ-小説すばる

【自己紹介】はじめまして、バーチャルCTuber真銀アヤです。

著:草野 原々

発売日:2019.02.15
定価:

全宇宙最強のヤバイマン、草野原々

草野原々は天才である。
今一番ヤバいSF作家は誰か、と訊ねられれば、私は真っ先にこの作家の名を挙げる。そして私は実際に何度もそうしてきた。とにかく草野原々の名は覚えておいて損はない。草野原々。くさのげんげん。KUSANO GENGEN。彼は本当にヤバく、彼の作品は本当にヤバい。
ヤバいというのは作品が優れているとか面白いとか奇書だとか、作者のテンションが異常だとか挙動がおかしいとかそういった意味も当然含むが、むろん、それだけではない。しかしここで詳細を話すには紙幅が足らないため惜いておく。作品の概要や作家の来歴など、辞書的な情報ならばほかを当たっていただきたい。彼が天才である理由を説明する前に、とりあえず、だいたい牛丼一杯分くらいの値段で、本作「【自己紹介】はじめまして、バーチャルCTuber真銀アヤです。」が買えるので、いったんこの文を読むのをやめて、今すぐ作品をダウンロードしていただきたい。そして冒頭を読み始めていただき、続いて中盤を、最後にラストのセリフを読んでいただきたい。話はそれからである。もはやこの文は書評の体裁を保っておらず、この文になんの意味があるのかわからなくなってきたが、草野原々という作家の魅力を伝えるには、断腸の思いながらそうせざるを得ないのである。
そして、この時点で既に草野作品をお読みいただいたあなたになら、その気持ちがわかっていただけていると思う。
「最後にして最初のアイドル」ではアイドル活動と宇宙の法則が、「エヴォリューションがーるず」ではソシャゲと生命の歴史が、そして本作「【自己紹介】はじめまして、バーチャルCTuber真銀アヤです。」では、バーチャルYouTuberとあなたの存在そのものが、渾然一体となって語られる。草野原々の世界では、ポップカルチャーとハイカルチャーには区分はなく、ジャンクなものがそのまま神の意志となり、世界の真理となり、風景を象り、そしてその風景は、ジャンクでありながら壮大で神秘的で、これ以上なく美しい。
草野原々の目に世界はそう映り、草野原々の物語はその世界を写し取る。
草野原々の作品を今読み終えたあなたには、草野原々の世界が見えている。
あなたには。
そう、「【自己紹介】はじめまして、バーチャルCTuber真銀アヤです。」を読み終えたあなたには。
今、あなたは草野原々の目で世界を見る。
今、あなたは草野原々の物語を生きている。
今、あなたは草野原々の世界を生きている。
今、あなたは草野原々なのだ。
そう。
今。
わたしたちが草野原々だ。

Writing

樋口 恭介(ひぐち・きょうすけ)

1989年生まれ。SF作家・翻訳家。主な仕事に『構造素子』(第5回ハヤカワ SFコンテスト大賞受賞作。第49回星雲賞長編部門候補作)、Oneohtrix Point Never『Age Of』歌詞監訳、ラモーナ・アンドラ・ザビエル名義で短編小説の翻訳・紹介など。twitter ID:@rrr_kgknk

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